図書室の海

本好きの感想ブログ

後宮 × 暗殺 × 医療

なぜか後宮が舞台の小説に惹かれる

まず、大昔の中国を舞台にした小説はたくさんある。なぜか。
京都や奈良に、唐や隋の時代の文化財が数多く残っている。この時代入ってきた文化の影響は大きいと思う。あと、西遊記、水滸伝、三国志、ゲームやアニメになっていて馴染みがある。漫画・アニメの『ドラゴンボール』も初期の頃はかなり西遊記テイストがところどころにあった。
日本の時代劇、大河ドラマに戦国時代と幕末が多いのと同じかな。人気があって知名度がある。歴史上の人物にも文献や研究などでの情報も多いだろうし。

後宮といえば、日本では内裏や大奥がこれに該当すると思うが、ライトノベルで言うところの「後宮」は中国や中近東のものがほとんどなのではないだろうか。中国でいえば唐、オスマン帝国のハレム(日本ではアラビアンナイトのイメージがすぐに思い浮かぶ)でも、ライトノベルでは圧倒的に中国の後宮ものの方が多い。

隠れた名作『後宮小説』

「腹上死であった、と記載されている」
という書き出しが有名な酒見賢一さんの小説。読んでみるとわかるが、今ある後宮ものライトノベルのテンプレートになったとも言える作品。

後宮小説 (新潮社)1993年

時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに…。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。

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風よ、万里を翔けよ

作者の田中芳樹さんは中国ものを沢山書かれているけど、男性読者が多く、私にはちょっとばかりとっつきにくかった。(三国志が苦手なタイプ)
その中でこの作品は、女の子が主人公で恋愛もからめつつ読みやすかった。というか好きだった。(後宮もの好きのルーツかもしれん。)

中国の伝説をもとにした京劇『花木蘭』がベースになっている。ディズニー映画の『ムーラン』といえばわかりやすいと思う(中身のアレンジは全然違うけど)。厳密には後宮ものではないけど、古の中国ものを好きになった原点その2。

江北の地にひとりの女児が産まれた。咲いたことのない庭の木蘭が、その時、開いた。17歳にして征遠百万の大軍に従軍-その名は、花木蘭。男装の花戦士。思い馳せてきた中国歴史ロマンの結実。(1991年 徳間書店)

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彩雲国物語

もう今更言うまでもない、中国風ライトノベル(少女小説)の大ヒット作。
雪乃紗衣さんのデビュー作『はじまりの風は紅く』(ビーンズ文庫版は2003年)から始まり長い間本を出し続けて、きっちりと終わらせたのがなにより讃えられるべきと思う!(読めなくなった作品を思えば、最大限の感謝を捧げたい…)

彩雲国物語 一、はじまりの風は紅く(角川文庫)2011年

当時は、張られた伏線、過去と現在が交錯する謎。新刊が出るたびにああでもないこうでもないと考察するのが楽しかった。ものすごい考察サイトとかあって感心しながら読んだな…
アニメも2シーズン放送されて、シリーズの後半ぐらいまでアニメ化されたはず。

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時間を置いてから出版された『骸骨を乞う』は私も落涙。泣かずにはいられなかった…
今は角川文庫から新装版が出版継続中で、表紙がとても美しい。過去に一度、大人版として角川文庫から出された時は、味気ない表紙で買う気にならなかった。今買える角川文庫版は大人だ!でも電子版がない!
電子版出たら買うよ。それから「陸清雅がどうして女嫌いになったのか」これが今でも気になってる…

骸骨を乞う 彩雲国秘抄 上 (角川文庫)2016年

後宮と殺人と医術

この組み合わせがすごく多い。なぜか。
まず後宮という舞台。皇帝という最高権力者、いわゆる高ステータスの男性が一人いるわけだ。女同士の戦い、足の引っ張り合い、いじめ、友情と裏切り。愛憎ドロドロの昼ドラ的なストーリーがいくらでもつくれそう。あるいは殺伐とした中での純愛とか。

かつ閉鎖的な空間なため、ミステリー仕立てにしやすい。限られた人たちと限られた場所。さらに、時代設定的に現代より制限があって(技術、科学面)トリックが成立しやすいんじゃないかな。権力争いから殺人がおきても不自然じゃないし。

そして、時代的に制限がある分、技術チート・トリックが使いやすいんだろうなって。現代の技術を持ち込む。あるいは他国の西洋的な技術を持ち込む。特に科学分野。電気・エネルギーは難しくても、化学・医学薬学分野ならなじみやすい。(そういえば彩雲国の疫病に関しては、生物学も絡んでいた。)

現実の歴史でも、かつて鉛、ヒ素、ウランといった物質を使って被害が出ているし、そんな昔でなくてもカドミウムなどの鉱物を使った絵の具を普通に使っていたしね。

反則とも言える現代の知識で問題解決するパターンと(なろうに多い)、時代設定的に解剖や鑑定・分析ができないため、状況やファンタジー要素で解決するパターンをよくみる。
いろんな方向に話を作りやすいし膨らませやすいから、読む方も「今度はどんなパターンでくるんだ?」とついつい楽しんで読んでしまう笑。

そのほか読んだ後宮ライトノベル

完結


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読み途中


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〜今日のひとこと。
「彩雲国の電子書籍!」

tamamushi-library.hatenablog.jp