図書室の海

本好きの感想ブログ

十二国記 - 続きが読める幸せ

本好きブログの記念すべき第1作目。
続きが読めなくなった本が幾多ある中、たとえ20年近く時間が空いたとしても続きが読める幸せ。小野不由美さんの十二国記は30周年を迎えたそうです。

十二国記30周年記念ガイドブック

「十二国記」30周年記念ガイドブック(新潮社)2022年

月の影 影の海

町の図書館で『月の影 影の海』を借りた。なんで手に取ったかは覚えていない。当時読んでいた少女小説からはかけ離れていた。とにかく前半は苦しくて。下巻の後半でようやく話が明るくなる。前半があるから最後のカタルシスがあるんだということはわかっているものの…でもとにかく主人公の女子高生が辛い目にあい人間不信になっていくあたりはしんどい。

月の影 影の海 ホワイトハート

月の影 影の海(ホワイトハート版)1992年

続編の『風の万里 黎明の空』もそうだけど、テレビドラマの水戸黄門的なところがある。最後に敵も味方もみなひれ伏しちゃう笑。まあそれが気持ちいいのだけれど。
ただ、当時は今みたいにネットやスマホがない時代。時間もあったしゆっくり本を読むことができた。今だったら途中でブラウザバックして終わっていたかもしれない。

当時の私は本好きではあるもののリアルさは求めていなかったと思う。少女漫画の延長で読んでいた少女小説。当時の枠組みでみれば十二国記は少女小説じゃないよね。恋愛要素ゼロだし。goサインだした講談社がすごい。きっと新潮社だったらなかったな。

月の影 影の海 新潮文庫

月の影 影の海(新潮社版)2012年

> 月の影 影の海(上)十二国記(新潮文庫) - 楽天ブックス

新潮社文庫とホワイトハート

講談社ホワイトハートレーベルから出版していた十二国記は、新潮社の『魔性の子』とつながっている。『魔性の子』をどの時点で読んだか定かではないけど『図南の翼』の前か『風の万里 黎明の空』の前あたり。今思えばこの順での読み方でよかったと思う。
> 魔性の子 十二国記(新潮文庫) - 楽天ブックス

何かよくわからない不気味さや怖さを味わいたければ『魔性の子』からスタート。ホラーテイストを存分に味わえる。十二国記の世界でハラハラしたければ「風の海 迷宮の岸」を読んでから「魔性の子」がいい。どちらで答え合わせをしたいかの違いかな。
大人になってからは短編集が好みだったりする。

華胥の幽夢

華胥の幽夢(ホワイトハート版)2001年

今は全部が講談社から新潮社へと移って新作も出ているわけだが、どう2社で話し合いがついたのか興味がある。途中から版元が変わるケースはたまーに見かけるが、禍根は残らないんだろうか。美味しいところもってったよね。あと、グッズとか販売するより電子書籍化してくれないかなって。

幻の短編が収録

30周年記念ガイドブックも読んだ。一番面白かったのが校閲担当者の話。いや、大変ですよこれ…漢字のルビだけでも膨大なうえ作った言葉の使い方。さらには十二国世界の地理(距離と移動時間)、登場人物の関係や各国の状況まで…整合性の確認が大変すぎる。なんとexcelデータで17シート分だとか!(十二国で12シートプラス5シートだそう)

CDブック(1997年発売)のために書き下ろされた幻の短編、延王と六太のエピソード「漂舶」も読める。が、文庫の方に入れてくれ…ほんとそういうとこだぞ!
> 「十二国記」30周年記念ガイドブック - 楽天ブックス

この本に先立って雑誌『芸術新潮』で特集が組まれた。挿絵を描いている山田章博さんの特集だ。この方がいなければ十二国記ははじまらない。
発売日の数日後に書店へ行ったら売り切れで。書店員さんが「いつもはこの辺に残ってるんですが…お取り寄せですね」といって電話で問い合わせてくれたところ、取次店にも出版社にもないとのこと。

新作を大々的にキャンペーン組んであれだけ売れたんだから、特集号くらい発行部数よめなかったんかい!と言いたい。
案の定Amazonではアホみたいな金額で売りに出てて、商売下手すぎる…と思った瞬間だった。それに電子版もないし商機のがしすぎでしょうと。
「もういいや…」と私もなんだか投げやりな気分になって、後日図書館に入ったものを読んだ。

(追記:2023年12月にこの特集を補強する形で書籍が発売されたらしい。大幅補強されたようだけどそのうち図書館でかりてみる。こういうのは、やっぱりその時の熱量があるときじゃないとね。)
「十二国記」絵師 山田章博の世界 - 楽天ブックス

空白の時間をものともせず

作者が亡くなったり執筆をやめてしまったり。色々な諸事情があり続きが読めなくなった少女小説は数多くある。また続きが出たとしても作者の書きたいものと読者の求めるものとでアンマッチが起こり、悲しい結果になることもある。
同じように書いているつもりでも創作する側も年齢を重ねて変わっていく。その時にしか作れないものもある。

最初から書きたいものがしっかりと決まっていて、それを貫き通している十二国記はブレない。これだけ月日が経っても読者が歳をとっても違和感がない。本当にすごいとしか言いようがない。

〜今日のひとこと。
「電子書籍は?」

tamamushi-library.hatenablog.jp