図書室の海

本好きの感想ブログ

夜明けの花園 恩田陸 - 麦の海に沈む果実のスピンオフ短編集

恩田陸さんの理瀬シリーズ最新刊『夜明けの花園』が 2024年1月講談社より発売。『麦の海に沈む果実』に関連する短編が全6作品収録されている。あの作品が好きだった人は読むべし。

『麦の海に沈む果実』の舞台である外と隔絶された学園は、陸の孤島、湿原に佇む古城。どうしてもフランスのモン・サン=ミシェル修道院が思い浮かぶ。あちらは海、干潟だけれど。でも、沈んだら浮かび上がらないという湿原と、潮の満ち引きが速く死者を多く出しているモン・サン=ミシェルはやっぱりイメージがかぶる。
モン・サン=ミシェル
その同じ学園を舞台に理瀬以外の視点の作品が4つ、舞台は違うけど主人公である理
視点の作品が2つ収録されている。

水晶の夜、翡翠の朝

青に捧げる悪夢(角川書店/角川文庫)2005/2013年 初出
殺人鬼の放課後(角川スニーカー文庫)2002年 収録
朝日のようにさわやかに(新潮社/新潮文庫)2007/2010年 収録

時系列では『麦の海に沈む果実』の後のはず。ヨハン視点のエピソードで、
ヨハンが試される話。憂理と聖(あと校長)も登場。ちょっとした学園ミステリーで『六番目の小夜子』っぽい。
カワセミ

麦の海に浮かぶ檻

謎の館へようこそ「黒」(講談社タイガ)2017年 初出

「えぇ…」って言うような結末だったけど、その後に「マジか!そっちか!」ってなった、とある生徒たちと校長先生のお話。ミスリードに見事にひっかかった。

睡蓮

蜜の眠り(廣済堂文庫)2000年 初出 
図書室の海(新潮社/新潮文庫)2002/2005年 収録

理瀬の幼少期のお話。稔と亘の兄弟、祖母、父が登場。思春期の理瀬が見られる。が、亘がただただ不憫…
恩田さんのミステリーには、クールビューティーな少女、冷静沈着メガネ君、パワフルなトランスジェンダー(全員顔が良い)がよく登場する気がします。特に現実離れした漫画的な作品に多いかな。
睡蓮

丘をゆく船

書き下ろし

『麦の海に沈む果実』の主要登場人物、黎二と麗子のお話。本編の前日譚にあたる。本編の結末を思えば胸が痛む。この理瀬シリーズに出てくる主要メンバーに比べれば至極真っ当な人たち(たぶん)。ゆえに悲しい。

月蝕

2023年 小説現代1・2月合併号掲載 初収録

『麦の海に沈む果実』の後日譚で、登場人物である聖(ひじり)が試されるお話。さらに『麦の海に沈む果実』を聖視点から見た振り返りにもなっていて、本編のストーリーと人物を思い返すのにとても助かる。第三者視点で補完するような感じでもある。
にしても製薬会社か…『MAZE』の神原恵弥との関わりが今後出てくるか?
月食

絵のない絵本

2022年 小説現代10月号掲載 初収録

理瀬が試されるお話。うーん…今回収録された短編のなかではいまいちに感じた。変な違和感がある。
なぜ情勢不安な外国で騒乱に巻き込まれる必要があったのか、登場人物も関係性が希薄で、理瀬への依頼の理由もなんか薄い。なんだろう、ヨハンのバックグラウンドとか理瀬の父とか組織とか現実味が薄いのに、舞台だけ現実をセッティングしたからか。現実離れした設定には『麦の海に沈む果実』のような舞台が似合う。そういうことだと思う。

しかし、この理瀬の父親を頂点とした組織はなんなんだろうね。やたらめったら腹違いの子供が出てきて文字通りサバイバルやってるし。あれかな、コナンくんのところの黒の組織的なやつ…

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〜今日のひとこと。
「シリーズ関連短編のまとめ感謝」

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