本好きの夢 - ブログタイトルが『図書室』な理由
『自分だけの図書室があればいいのにーー』恩田陸さんのエッセイかコラムか小説内か。そんな風なことを書かれていて激しく同意したことを覚えている。自分が今まで読んだ本が全部蔵書として格納されている図書室。
かつて読んだことがあってもう一度読みたい時、読んだのに作者や題名を思い出せない時、断片しか覚えていない作品、読んだことさえ忘れてしまった作品。そういった本がずらっと並んでいたら!
タイトルがわかっていればいい方で、微妙に間違って覚えていたり、一体どこの出版社からで誰が書いたのかもわからない、漠然とした記憶しかない場合、探し出すのは困難を極める。見つけられたとしてもすでに絶版でしたというオチもある。
新旧織り交ぜ記憶を辿りつつ本を取り上げていくつもりなので、管理人の架空図書室(図書館ほどの規模はない)の意味合いがブログタイトルにある(はず…)
電子書籍という選択
本が大好きだ。でも保管スペースを取るため収納が1番の問題。本の重量で床が抜けた…なんて笑いごとですまない話もニュースで見たことがある。あとは紙が痛むし劣化する、処分に困る。そんなところだろうか。
電子書籍はそんな問題を解決してくれる手軽な手段。書籍が電子化されていることと、端末の容量次第だけれども。
私もかつては紙本派。電子書籍は味気ないし、紙ページをめくるのがいい、ランダムにめくって新しい発見があるんだとか色々こじつけて電子書籍を拒んでいた。確かに装丁の美しさや質感、書体や文字組のデザインなどこだわり抜いた本の魅力は言うまでもなく、それで一つの完成品。所有する喜びもよくわかる。
しかし、一人一人が端末を持っている時代に電子書籍を利用しない手はない。遠い昔に絶版になった本も綺麗な状態で読めるのだ。手元の端末の中に数百〜数千の本が入っていていつどこでも(TPOを忘れずに!)読める。続きが読みたければ、すぐにDL(ダウンロード)して夜中だろうが読み進められる。次の日までやきもきした気持ちで待たなくていいし、本屋になくてがっかりしたり配達が届くまで待たなくていい。
年齢が上がり、視力が落ちて読みづらくても表示拡大すれば楽に読むことができる。音読だって可能だろう。アクセシビリティにも優れているのである。
電子書籍版を販売しないのはなぜ?
ただ、電子書籍にもデメリットはある。電子化していない作品が新しくても結構あるのだ。古い作品は需要がなければ出版社にもメリットがないため電子化しない理由はわかる。だが新規出版の作品で電子化しない理由は何か。出版社によっては電子版の配信を紙本の発売日から遅らせているところもある。紙本を優先的に売りたいからか。それとも作家の意向なのか…
電子化したら紙本が売れない? それはちょっと恥ずかしい言い訳のように聞こえる。それは ”電子化したら紙本を売る自信がありません、そこまでの魅力が作品にありません”って言っているようなものじゃないか。
私は「ちょっと読んでみようかな…」ぐらいの場合、手軽に読める電子書籍一択。紙本だったら手を出さないぐらいの気持ちでも電子版なら読む。文庫本やコミックなどはほぼ電子版。
逆に写真やデザインなどビジュアルがメインのものは紙本を買う。そして気に入って大好きなものは両方買うのだ。じっくりと紙面を堪能するなら実物の本。どこでもいつでも読みたいときに電子版。要はケースバイケースで読者は本の媒体を選ぶ。ユーザーにとって価値のある本なら財布の紐はゆるむ。
その選択肢を最初から狭めるようなことをしないでと切に願う。
どこで電子書籍を買うか。配信サービスが終了した場合に(あまり想像したくないけど)全て読めなくなるリスクを考えて大手の配信会社を選ぶことをお勧めしたい。配信会社によってはスマホではDLできるが、PCではできない。PCでもWindowsはできるがMacはできないなど制限があったりするのでよく調べて自分の環境にあったサービスを選ぼう。
図書室の海
本好き恩田陸さんの短編集。この本のタイトルをブログ名として拝借。この頃の恩田陸さんの作品が大好きで。
いろんな作品を集めた一冊なので、短編同士の繋がりはないし、設定・背景がよくわからないものもある(序章、導入部分だけのようなものがある)。長編作品のスピンオフ的な小作品が多く長編を読むとバックグラウンドがわかって2度美味しい。
今回あらためて読み直してみると『ある映画の記憶』が印象的。海の情景が頭の中に広がってなんとも言えない余韻が残る。
ある地方に伝わる奇妙なゲーム。秘密裏にゲームを引き継ぐ”サヨコ”のほかに、鍵を渡すだけのサヨコがいた-。もうひとつの小夜子の物語「図書室の海」ほか、あるウエイトレスの殺意と孤独を描くぞくっとする話、記憶を刺激する懐かしくも切ない物語、異色SFと、様々な物語を次々と紡ぎ出す恩田陸の世界を堪能できる1冊。
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『図書室の海』
『六番目の小夜子』のスピンオフ。関根一家が活躍する短編が、実は一番好きだったりする。関根三兄弟の春、夏、秋のうち関根夏が登場する短編。こちらもできれば『六番目の小夜子』を先に読んだ方がいい。
恩田陸さんの学園ものは、ちょっと怖い。恐怖ではなく、なんだか落ち着かない、ゾワゾワする感じ。思わず後ろを振り返りたくなる怖さ。
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『ピクニックの準備』
『夜のピクニック』の前日譚。『夜のピクニック』は恩田陸さんの群像劇小説の中では一番好きだ。本屋大賞を受賞し直木賞もいける!と思ったがはずれてしまった…(のちに違う作品で受賞されている)こんな学生時代を過ごしたわけじゃないのになぜか懐かしさを感じる素敵な小説。
夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。三年間わだかまった想いを清算するために-。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前にはアメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る-。
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『睡蓮』
『三月は深き紅の淵を』—印象的なタイトルと本好きのためのミステリー。ここから始まるシリーズで、第二作目『麦の海に沈む果実』の主役、理瀬の少女時代を書いたもの。長編を先に読んでいないとわかりにくいと思う。このシリーズ中では特に『黒と茶の幻想』がとても好み。
「ここに三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」-湿原の真中に建つ全寮制の学園に、二月の終わりの日に転入してきた水野理瀬。彼女を迎えたのは、様々なしきたりや、奇妙な風習が存在する不思議な学校だった。彼女と学校生活を共にする仲間、「ファミリー」もそれぞれに謎を抱えていた。功は、閉ざされたコンサート会場の中から失踪し、麗子は、湿原に囲まれて外に逃げ出せないはずの学園から消えうせていた。残りのメンバーは、麗子はすでに死んでいるのではないか、と校長につめよる。それに対し、校長が提案したのは、麗子の霊を呼び出す交霊会の実施だった。その場で理瀬に奇怪な現象が襲う。「三月の学園」での奇妙な学園生活を送る理瀬の隠された秘密とは。
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今まで全部読んだ本を思い出して掲載していくことはとてもじゃないけど不可能で。でも自分の記憶を掘り起こし、埋もれてしまった作品を再び引っ張り上げて紹介したい、面白さを知ってもらいたい、”MY図書室”を一部公開しよう。そんな思惑があってはじめたブログ。ここで出会った作品が本好きの読書ライフをより楽しいものにしてくれることを願って。
〜今日のひとこと。
「できることなら本に埋もれていたい」