玉虫色の図書室

Tamamushi Color Library

映画ハウルの動く城が理解できないと言われて

魔法使いハウルと火の悪魔

ジブリ映画『ハウルの動く城』の原作。先日、友人とアニメ映画の話をしていて「ハウルの動く城ってイマイチ理解できないんだよね」と友人が言う。確かにわかりにくい。原作を読んでいないと理解できないと思う。
でも、友人に映画の解説をしようにも、自分も原作読んだり映画をみたのが随分前で、かなり記憶があやふやだったりして上手く説明できない。
そこでもう一回原作を読んでみることにした。


魔法使いハウルと火の悪魔 (徳間文庫) [ ダイアナ・ウィン・ジョーンズ ] - 楽天ブックス

魔法が本当に存在する国インガリーで、三人姉妹の長女に生まれたソフィー。「長女は何をやってもうまくいかない」という昔話のパターンが実現したかのように、ある日ソフィーは、『荒地の魔女』に呪いをかけられ、九十歳の老婆に変身させられてしまう。家族を驚かせたくないと家出したソフィーは空中の城に住む、うぬぼれ屋で移り気な若い魔法使いハウルのもとに、掃除婦として住み込んだ。ハウルに魔力を提供している火の悪魔とこっそり取引したり、ハウルの弟子と、七リーグ靴をはいて流れ星を追いかけたり。謎のかかしや、犬人間も現れて…?やがて、ハウルの意外な素顔を知ったソフィーは、力を合わせて魔女と闘おうとするが…?

ハウルの動く城 1 魔法使いハウルと火の悪魔 - ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/西村醇子(徳間文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -

オズの魔法使い

まず、この作品には大前提となっているものがある。一つ目は L・フランク・ボームの『オズの魔法使い』が下敷きになっていること。

ある日、少女ドロシーと愛犬トトは家から遠く離れた地に飛ばされてしまい、北の良き魔女に助言を受け、オズの魔法使いのいるエメラルドの都を目指す。その旅の途中、棒に引っ掛かったカカシを助け、ブリキの木こりと臆病なライオンに出会う。カカシは脳を、ブリキの木こりは心を、ライオンは勇気を手に入れる願いを叶えてもらうため、一緒に旅をすることになる。さらには、西の悪しき魔女を倒せば願いを叶えると言われまた旅に出る。

さて、ジョーンズさんはこの『オズ』の要素をうま〜くミックスしているように思える。
ハウルは、のらりくらりと相手の質問をはぐらかし確かなことは言わない。不快なことはしたくないし逃げたりする。調子が良くて気ままでうぬぼれ屋。でも臆病で正直になれない。そしてきわめつけは “心”がない。ブリキの木こりとライオンを合わせたかのように。
正体はここでは書かないけど、カブ頭のかかしと人間犬が、脳のないかかしとバラバラにされたブリキの木こりの要素をもっている。

ソフィーの力

大前提の二つ目はソフィーの力。
ソフィーは力のある魔女である、ということ。ここを理解していないと全然ストーリーの意味がわからないし、なぜハウルを助けることが出来たのかもわからなくなる。なぜソフィーにしかハウルを助けられないのか。
ソフィーの力とは物に命を吹き込む魔法。帽子、衣服、かかし、杖、犬、骸骨、花、そして火の悪魔。話しかけては自覚なしに魔法をかけてしまう(老婆になって独り言に拍車がかかるのがさらに混乱の元に笑)。

ソフィーは「長女は何をやってもうまくいかない」「主役はいつだって他の人」と、ちょっと思い込みの激しい女の子。
思慮深いようで考えなしな行動もする。で、失敗やトラブルになって「ほら、やっぱり長女だから上手くいかないんだ!」って笑。
この ”長女だから”っていうのは、世界中にある教訓的なおとぎ話でよくある、3人兄弟で一番下の子がうまくいって一番美味しい思いをするってやつ。単純な例だと『三びきのこぶた』みたいなね。(ちなみに「ハッター」という帽子屋は『不思議の国のアリス』から)

そのソフィーは、荒地の魔女に呪いをかけられて年老いてしまう。でもここからがジョーンズ小説の面白いところで、老婆になったことでなぜか開き直るソフィー。独り言や愚痴が増える、悪態をつく、自分のやりたいようにやる。と怖いもの無し笑。そうしているうちに、ものの見方も変わっていく。
なろう小説だと、若くなったり外国人みたいに見た目がかわったり美人だったりするけど、この作品は逆。でも、ハウルはちゃんと呪いの存在に気づいていて、めちゃくちゃやってるソフィーを受け入れてる。素敵な二人なんだよね。

火の悪魔カルシファー

三つ目は、火の悪魔カルシファーの存在。正体は流れ星。
火の悪魔は魔法使いと契約し、力を貸し与えるが、それには代償が伴っている。ハウルとカルシファーはお互いにこのままではダメだと思ってはいるもののどうにもできない状態にあった。
荒地の魔女もまた悪魔と契約を交わした魔法使い。このストーリーの根本は、火の悪魔と契約した魔法使い同士の戦いで、一方は消滅し一方は解放される。色々自覚した魔女がこんがらかった魔法と呪いを解くお話。
なのに、映画ではジブリが戦争なんてものを突っ込んできたために、主題からズレた。(原作では派手な魔法合戦はおきたけど、町の人たちが野次馬になって眺めてた笑。)

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品

現代の日常に魔法が普通にある世界を描く天才。ウィットにあふれてクスッと笑える。でもちょっとひねくれている登場人物たち。
一癖も二癖もある多彩な登場人物たちが巻き起こすトラブル。意識無意識関係なく魔法も入り乱れて大混乱。ごっちゃごちゃになって「どうなるのこれ!?」って状態から綺麗に大団円にまとめあげるのがダイアナ・ウィン・ジョーンズの真骨頂。ジョーンズ作品の醍醐味。
残念ながらジブリ版映画はこの一番いいところが消滅してる。(別の作品とし見ればまあ…)

『ハウルの動く城』続編が二つある。主役はハウル&ソフィーではなくなるけど、ちょいちょい出てくる。

  • ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔
  • ハウルの動く城2 アブダラと空飛ぶ絨毯
  • ハウルの動く城3 チャーメインと魔法の家
大魔法使いクレストマンシー

ハウルの動く城を気に入った方は、こちらがオススメ!
クレストマンシーシリーズ。ハウルに輪をかけてぶっ飛んだ魔法使いのクレストマンシー。でもなぜかとっても惹かれるんだよね。

  • 大魔法使いクレストマンシー 魔女と暮らせば
  • 大魔法使いクレストマンシー クリストファーの魔法の旅
  • 大魔法使いクレストマンシー トニーノの歌う魔法
  • 大魔法使いクレストマンシー 魔法使いはだれだ
  • 大魔法使いクレストマンシー外伝 魔法がいっぱい
  • 大魔法使いクレストマンシー 魔法の館にやとわれて
  • 大魔法使いクレストマンシー キャットと魔法の卵

キャットと魔法の卵 (徳間書店)

キャットと魔法の卵 (徳間書店)2009年

もっともっと続きを読みたいと思うところだけど、ジョーンズさんは2011年にお亡くなりになっていて、もう新たな作品が読めない…
ハウルシリーズは全部電子書籍化されているけど、クレストマンシーシリーズは未電子化。ぜひこちらも電子化してほしい!

〜今日のひとこと。
「恋と魔法の自覚で解決」